MSI K7N420

▼ 概要。

i815Eの登場で一気にメインストリームに踊りでたグラフィック機能統合チップセットですが、肝心の性能が今ひとつなことなどにより、外部AGPを持たないチップセットにおいては現在では低価格マシンにのみ採用される存在となっています。

そこにきて今回のマザーに搭載されているチップセット、nForceはあのnVIDIAが製作したチップセットで、統合グラフィック機能はVGAカード用としても現役のGeForce2MXレベル、その上抜群のメモリパフォーマンスやハードウェアサウンド機能、そしてLAN等の付加機能まできっちり押さえたまさに次世代のチップセットです。6月に台湾で初めて実働サンプルを見て以来実に約半年後の製品化となりました。

技術的な詳細についてはnVIDIAのサイトや各種ニュースサイトをご覧いただくとして、今回は実際に計測した結果を中心にご紹介しようと思います。

 

マザーの作りは従来のものとあまり違いがありません。USBポートの上にLANポートがあることを除けばごく一般的なATXマザーです。

部品の中ではノースチップにあたるIGP(IGP-128)上の巨大なヒートシンクが目立ちますが、実際動作中にはかなり熱くなります。

CPUソケット周りのスペースはかなり広いです。しかしヒートシンク固定用の穴のすぐそばまでコンデンサやパターンがあるため、PAL8045Uを取り付ける場合には何らかの対策を練ってからの方が無難そうに感じました。

2001.11.30 Update :
早速、実際に使用されている方から「PAL8045Uも問題なく取り付け可能」というご報告をいただきました。ありがとうございました。しつこいようですが、PAL8045Uが使えるかどうかは非常に重要だと思いますので、実際に使用されているというご報告は個人的にも非常に嬉しいです。

 

1+2という風に見える少し変わったメモリスロット部分です。

メーカーの方に以前から「3本とも使用すると遅くなる」と聞いていただけにどうしてわざわざ3本設置するのかずっと疑問でしたが、今回のテストで何となくその理由がわかりました。

ちなみにバンクは「0,1」「2,3」「4,5」と割り振られています。

このパターンの多さの影響でIDE/FDDコネクタが低い位置に移動しているのは一長一短といったところでしょう。

 

その他で気になったのはATX電源コネクタの爪がI/Oポート側に(ポートと密接して)あるため、一度取り付けると外すのにかなり苦労することぐらいです。

今回試用したマザーのリビジョンは「1.0」、バージョンの付け方はメーカーにより様々ですが、「0.x」よりも全然安心出来ます。

BIOSのバージョンは「2.0」、WEBで公開されているものと同じでした。

ここで画像をいくつかご覧ください。まずはWindows XPインストール直後のデバイスマネージャです。様々なチップセットを標準でサポートするXPですがさすがにnForceはサポートが間に合わなかった模様です。続いてWCPUIDのメイン情報/チップセット情報、そしてPowerStripのVGA設定画面です。これらも未対応と「いかにも初物」な結果です。


▼ テストに至るまで。

今回のテストは実際のところかなり苦労しました。まずはメモリについて。メモリ(スロット/バンク)の使用方法によって性能に違いが出るだろうことは想像していたのですが、あそこまで違いが出るとは思っていなかっただけにデータ収集にかなりてこずりました。

続いてOSについて。どうもnForceはME以降のみをサポートしている模様で、当サイトにおいてベンチマーク用環境として用いてきた「Windows 98SE」が通常方法では使用不可能でした。まずインストール後の起動に失敗し(セーフモードを介することで起動する場合もある)、続いてドライバが入らず(ME以降のみという警告が出る)、そしてOS終了に失敗(旗画面で停止)します。

MEや2000/XPのリリース後も98SEを用いつづけた理由としては、

・ 途中でOSが変わることで、過去のデータとの比較検証が出来なくなる。
・ DirectX7.0準拠で製作されたベンチマークを中心に2000/XPではスコアが伸びない。
・ MEは標準で常駐しているソフトウェアが非常に多く、検証に向かない。
・ システムの再インストール等、環境構築にかかる時間が短い

などが挙げられますが、一応ドライバはデバイスマネージャのリストから推測で全てインストール出来たものの起動/終了の失敗が回避できなかった為、今回は諦めるほかありませんでした。

よって比較対象データが間に合っていません。追試が終わり次第、掲載予定です。

なお、Windows ME/2000/XPにおいては動作はかなり安定していました。全てにおいて不安定だったわけではないことを明記しておきます。ただIRQのルーティングは癖がある模様です。


▼ メモリにまつわるエトセトラ。

nForce(IGP-128)の特長の1つとして、128bit(64bitx2)動作によりP4-RDRAMをも上回るメモリ帯域を実現する機能が挙げられますが、様々な条件をパスする必要があります。

まずは実際にDDR-SDRAM 256MB(PC2100/CL2/2BANK)、同 128MB(PC2100/CL2/1BANK)のメモリを取り付けて計測した結果をご覧ください。

テスト環境 : Athlon XP1700+ / Integrated VGA / Windows XP Pro

・SiSoft Sandra 2001te : Memory Benchmark

No. DIMM 1 DIMM 2 DIMM 3  
1 256MB - 256MB
2 256MB 128MB 256MB
3 256MB - -
4 256MB 128MB -
5 256MB 256MB -
6 256MB - 128MB

同じマザーを使用していてここまで結果に差が出たのは正直初めてというくらい差が出ています。

まず最速なのはDIMM1,3に同容量のメモリを取り付けた場合で、この結果は(メモリをVGAと共有しているにも関わらず)Athlon-DDR環境で最速クラスです。逆に最も遅いのはDIMM1,2に取り付けた場合で、今度は最遅クラスになっています。

また、メーカー推奨の取り付け方(DIMM2には1BANKのメモリのみ)をした場合にも、メモリ速度には一定の性能低下が見られることがわかります(それでも2BANKを使用するより上)。

以上より、今回のマザーのメモリ性能を生かしきるには「DIMM2は極力使用せず、DIMM1,3に同容量(性能)のメモリを取り付ける」のがベストであることがわかります(ちなみにマニュアルに明記されています)。


▼ 外部AGPの場合。

nForceは優秀なグラフィックコアを有していながら外部のAGPカードも使用することも出来ます。nVIDIA製ということで他社製カードとの相性問題が気になるところですし、今回は「RADEON 8500 LE」を用意してみました。チップセットとの相性が話題に上がりやすい同カードが安定して動けば、nForceのAGPはかなり安定していると言ってもいいのではないか?という目論見です。

そして注目の結果は…。

テスト環境 : Athlon XP1700+ / Windows XP Pro / Geforce 3(Detonator XP) / RADEON 8500LE(3286)

・SiSoft Sandra 2001te : Memory Benchmark

No. DIMM 1 DIMM 2 DIMM 3  
7 256MB - 256MB

外部VGA使用によるメモリ共有が解除されるためか、メモリ性能はさらに向上します。

・3DMark 2000 v1.1 /2001 : Default Benchmark / SLBench v0.50a : Average FPS

 

その他のベンチマーク含め、(Geforce3は当然として)RADEON 8500LEも問題なく動作しました。こう見るとRADEON 8500LE圧勝ですが、他のベンチではほとんど同じスコアになります。現時点でのオーバーレイの画質も含めて、どちらを選択するか非常に難しいものがあります。

ここで少し面白いベンチマーク結果をご紹介します。256MBx1の時のスコアです。

・SiSoft Sandra 2001te : Memory Benchmark

No. DIMM 1 DIMM 2 DIMM 3  
8 256MB - -

こちらも同条件の内蔵VGA使用時よりスコアが向上していますが、向上幅が大きいです。

・3DMark 2000 v1.1 /2001 : Default Benchmark / SLBench v0.50a : Average FPS

 

確かにメモリ周りのベンチマークでは差が出ていますが、3D系ベンチマークではまったくと言っていいほど差が出ていません。これは外部VGAがある環境においては64bitでも十分過ぎるほど高速であるためではないかと推測されます。つまり、外部VGA使用時にはメモリの取り付け方にそこまでこだわる必要がない、ということになります。ちなみに、「SuperPI」においては、

・ SuperPI - 104万桁

No.1 No.3 No.7 No.8
1分15秒 1分18秒 1分14秒 1分16秒

というように微妙に結果が異なります。しかしBIOS標準設定のXP 1700+で1分14秒ですので、XP 1900+では1分10秒切れそうです。いよいよ…。


▼ ネットワーク&サウンド。

まずはネットワーク機能、残念ながらXPでも標準で認識されないため、使い勝手は今ひとつです。

そのXPにおいてドライバ適用後、ローカルネットワークでファイルコピー速度を測定してみたところおおよそ7.8MB/sec程度でした。同時にテストしたRTL8139A(蟹さん)でもほぼ同様だったことから、性能は悪くないことがわかります。ただ、MEでは最新ドライバを適用しても上記の2/3程度の速度しか出ませんでした(それでもOS標準ドライバ使用の8139より高速です)。

今回のマザーはnForce(MCP-D)を搭載していますので、「DOLBY DIGITAL」出力にも対応しています。

 

おそらく史上初と思われるチップセット(MCP-D)上の「DOLBY」のロゴと文字、ただのサウンド機能ではないことを訴えかけてきます。

か、肝心のドライバの出来が今ひとつなためか、ドライバを更新するとアナログ出力の設定から「DOLBY SURROUND」の項目が綺麗に消えてしまいました。

あと昔のサウンドカードによくあった、マシン起動時とシャットダウン時の「ブツッ」というあの巨大な音が鳴ります。これは若干マイナス点です。

とりあえずWindows XP/PowerDVD XP(with Patch)の組み合わせで問題なくDTS/AC3スルー出力が設定可能でした。このサウンド機能については今後も継続的に検証予定です。

2001.12.03 Update :
サウンドのコントロールパネルは現状でこのようになっていて、通常の出力においてはフロントかリアのどちらかしか出力出来ないことになっています。


▼ VGAベンチマーク。

いよいよ内蔵グラフィック機能を使用した場合のベンチマークです。が、その前にそのドライバについて少し記述します。nForce用のVGAドライバは有名なDetonatorシリーズとは別になっていて、現時点で最新は「15.40」となっています。このナンバーに見覚えがある方はピンとこられたかもしれませんが、実はこのドライバはGeForce3などでも利用可能です。

ではその逆、nForceにDetonator XPを適用できるかというと結果的には不可能でした。しかしnForceのVGAコアはGeforce2MX、ならばDetonator XPでかなり性能が向上しそうな予感がします。

と、テストしているうちにnForceのVGAドライバ導入後、外部VGA(Geforce3など)に対してDetonator XPを適用すると、外部VGAを外した後のnForceにもDetonator XPのドライバが適用されることに気づきました。

そしてそんな適用方法だと不安定になるかと思いきや、ドライバの設定画面も日本語化されるのに加え標準の状態よりも3D/2Dとも非常に安定するのがまた驚きでした。

というわけで、今回は上記環境においてベンチマークを計測しました。もちろん無保証となりますが、VGAの不安定さに悩まれた際には試す価値があるかもしれません。

テスト環境 : Athlon XP1700+ / Integrated VGA / Windows XP Pro

・HDBench v3.30 : Video

 

2DベンチマークとしてHDBenchを取り上げました。意外なほどに差が出ていますが実作業においては差を感じません。画質は中程度といったところでしょうか。

・3DMark 2000 v1.1 /2001 : Default Benchmark / SLBench v0.50a : Average FPS

 

続いて3Dベンチマークです。内蔵VGAで4800オーバーと今までとは桁違いです。しかしメモリ負荷の上がる2001では今ひとつ伸び悩んでいます。

2001.12.03 Update :
流出版ドライバ、Ver.23.10では内蔵VGAも認識されるとのご報告をいただきました。3DMark 2001のスコアも順当に向上するようです。

・Quake III Arena Demo : timedemo 1 / demo demo001 : VGA/SVGA/XGA

 

おおよそMX200/400クラスの性能が出ています。しかしCPU他が高性能なことを考えると少々伸び悩んでいる感じです。といってもi815Eなどとは桁が違うのですが…。


▼ まとめ。

以上より、今回のマザーには随所に初物らしい危うさがあり、また内蔵VGAも既存のものよりは非常に優秀ながら、最近のVGAカードの低価格化を考えるとそれだけでマザーの高価さを補うには微妙な程度であることもわかりました。

しかしその最速に近い性能、そしてnVIDIAのドライバ更新の手際の良さなどを考慮すると、現時点でも十分に買いなマザーなのも確かです。Micro-ATXやノートへの採用など、今後の多方面に渡る活躍が大いに期待されるところです。



Posted by dospara_review at 18:48Comments(0)TrackBack(0)マザーボード │2001年11月30日
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